

オムニチャネルとは、企業とユーザーの接点や販売経路(チャネル)を統合する販売戦略です。オムニチャネルの実施は、CXの向上やDXによる業務の自動化、売上増加などメリットがたくさん!今回は、ECサイトや小売店に取り入れてほしいオムニチャネルについてご紹介します!
先輩先輩っ。頼まれていた事務用品、いつものお店に在庫がなくて買えなかったんですけど、店員さんがネットショップで事務所に配送してくれるように手配してくれました!親切なお店ですね~!!
おお、それは助かるねぇ。店頭からECサイトの買い物ができるってことは、オムニチャネルのお店なんだねぇ。
お、オムニチャネル……?それ、なんですか!?
今さら聞けないオムニチャネルとは?

オムニチャネルとは、企業とお客さまのあらゆる接点や販売経路(チャネル)を連携・統合し、総合的にアプローチしていく戦略のことです。
小売業を中心に増えてきている販売戦略で、実店舗やECサイトなどのチャネルの垣根を超えて買い物ができる、新しい購買体験のことを指します。
販売戦略にはオムニチャネルのほかにも多くの手法があり、それぞれの特徴や違いをあまり区別できていない方も多いかもしれません。
ここでは、オムニチャネルと関連する用語、それぞれの違いを具体例とともにご紹介しますので、しっかりと意味を整理しておきましょう!
今さら聞けないオムニチャネルと関連用語
シングルチャネル
企業とお客さまの接点や販売経路がひとつしかない状態のことです。たとえば、「店頭でしか販売していない個人店の八百屋」「ECサイトでしか購入できないアパレルブランド」などは、シングルチャネルに含まれます。
マルチチャネル
複数のチャネルが存在することを、マルチチャネルと言います。店頭やECサイトなどさまざまな接点を持っていますが、それぞれの接点が独立して存在しており、顧客情報や在庫情報は連携されていない状態になっている点が特徴です。
たとえば、「店頭とECサイトの両方が利用できるけれど、店頭からECサイト、ECサイトから店頭の在庫状況や顧客情報を閲覧できない」という場合はマルチチャネルに該当します。
オムニチャネル
先述したとおり、企業とお客さまのすべてのチャネルを統合して、区別することなくアプローチしていく販売戦略です。オムニチャネルに含まれるのは実店舗やECサイトだけではなく、メルマガやテレアポ、SNSなどといったすべてのチャネルです。
オムニチャネルを活用すれば、お客さまが買い物をするときの利便性が大きく向上し、顧客体験価値(CX)を高めることができます。
たとえば、お客さまがパソコンを買いに電気屋に足を運んだが、店頭の在庫が切れていたとします。
このときにオムニチャネルを活用すれば、「お客さまは店頭で代金を支払い、店員がECサイトからパソコンを手配してお客さまの希望する場所まで配送するように手配する」ということも可能です。
従来であれば「売り切れているので店頭に取り寄せますね」「ご自身でECサイトから購入していただけますか?」と案内する必要がありました。しかし、オムニチャネルであれば、チャネルをまたいでシームレスな購入体験をすることができるのです。
クロスチャネル
複数のチャネルを保有しており、それぞれのチャネルの連携を行っている状態を指します。
オムニチャネルと似ているように思われるかもしれませんが、それぞれのチャネルが統合されているわけではない点に注意が必要です。
たとえば、店頭からECサイトの在庫は確認できますが、それを店頭から注文したり店頭で支払いしたりすることはできません。
あくまで情報が連携されているだけであり、チャネルを横断して購入することはできないため、店頭では「ご自身でECサイトからご購入ください」と案内しなくてはいけません。
なるほど……、オムニチャネルってすっごく便利ですね!当たり前のように利用していたから意識したことなかったけど、少し前まではマルチチャネルやクロスチャネルのお店も多かったような…?
そうだね。オムニチャネルは近年取り入れられるようになった販売戦略なんだ。ほかにも、近頃は「O2O」や「OMO」という概念が注目されてきているよ。
オムニチャネルと区別!「O2O」と「OMO」って?

オムニチャネルの関連用語としてチャネルの種類をご紹介しましたが、近年注目されている販売戦略・マーケティング概念として「O2O」と「OMO」というものがあることをご存知でしょうか?
チャネルを横断した購買体験を提供するところはオムニチャネルと似ていますが、それぞれで意味や考え方がまったく異なるため注意が必要です。
オムニチャネルと「O2O」そして「OMO」についてしっかりと区別しておきましょう。
O2O
Online to Offlineの略語で、オンラインからオフラインの店舗へ誘導すること、もしくはその逆を目的とした販売戦略です。
たとえば、ECサイトで購入してくれたお客さまに実店舗のみで使えるクーポンを配布し、店頭の集客や売上アップを狙う戦略がO2Oに含まれます。
OMO
Online Merges with Offlineの略語で、オンラインとオフラインを融合した販売戦略を指します。たとえば、スマートフォンから実店舗のデリバリーサービスを頼める「Uber eats」や、ネットで購入したものを店舗で受け取れるようにしたネットスーパーなどが、代表的な施策の一例です。
OMOを利用すれば、ほかにも店舗で商品のバーコードを読み取るだけで詳細やレビューが見られたり、あらゆる支払いがスマートフォンから行えたりするようになります。
OMOでは、ユーザーのさまざまな情報をオンラインデータ化して、個人IDに紐付けてオフラインで活用できるようにします。オムニチャネルやO2Oを一歩発展させたビジネスモデルが、OMOというわけなのです。
おお、実際に身近で体験したことがある販売戦略ばかり!こんなにたくさんの概念があるなんて知らなかったです~!
それじゃ、ビギニャー君。どうしてオムニチャネルみたいな販売戦略が必要とされるようになったのか、わかるかな?
オムニチャネルが求められるようになった背景や課題

そもそも、どうしてオムニチャネルは注目を集めるようになったのでしょうか。ここでは、オムニチャネルが求められるようになった背景や課題を解説します。
オムニチャネルが求められている背景
DX化やIoTが推進されるようになったから
DX化とは「デジタル技術による生活やビジネスの変革」を意味する言葉で、IoTは「あらゆるものがインターネットにつながること」を指します。近年、このDXとIoTをビジネスで取り入れる流れが強まってきています。
DXやIoTの概念は2011年頃から注目されていました。しかし、昨今の社会情勢により、リモートワークやステイホームが推奨されるようになったことでさらに必要性が強調され、一気に環境整備が進められるようになりました。
オムニチャネルで業務プロセスを効率化するDX化や、離れた場所からインターンネットを通して在庫管理などを行えるIoTを進めれば、大幅な自動化や人手不足の解消を実現することができます。その結果、感染症の影響を受けにくいビジネス体制を整えられるようになるのです。
お客さまがいろいろなチャネルを渡り歩くようになったから
オムニチャネルが注目されるようになった最大の理由は、スマートフォンやSNSが普及し、お客さまの行動が一気に多様化したためです。
以前までは、お客さまはマスメディアや店頭などからしか情報を収集できませんでした。しかし、近年はスマートフォンやSNSでいつでもどこでも情報が得られるようになり、店頭だけではなくインターネットからも気軽に買い物ができるようになりました。
つまり、お客さまはいろいろなチャネルを渡り歩き、自分が使いやすいチャネルで買い物をしたいと思うようになってきているのです。
企業はお客さまにとって利便性が高くて都合のいいチャネルを用意できないと、お客さまに選んでもらうことが難しくなってきています。
チャネルを複数用意しておき、お客さまが買いたいと思ったタイミングで商品を提供できれば、お客さまの心を掴んでCXを高めることが可能となるです。
顧客の行動を正確に計測できるから
オムニチャネルを活用すれば、お客さまの行動を正確に計測できます。たとえば、複数のチャネルを持っていながら連携が取れていない「マルチチャネル」の場合、特定のお客さまがどこで何を買ったかを正確に把握できません。
ECサイトと店頭のそれぞれで会員情報を管理できていても、情報を連携できていなければ、特定のお客さまが各チャネルでどのような行動を取ったのかを知ることが難しいのです。
オムニチャネルの場合、すべてのチャネルが統合・連携されているので、「Aさんは店頭で〇〇を買い、Eサイトで△△を買い、メルマガで□□をクリックした」という顧客の行動をすべて把握することが可能です。MAやCRMでお客さまの行動履歴をしっかりと管理できるため、次の施策やアプローチに役立てられます。
へぇ~!時代の変容やお客さまの購買行動の変化が起きたことで、オムニチャネルの重要性が高まっているんですね!
そうなんだよ。オムニチャネルを取り入れることは決して簡単ではないけど、企業とお客さまの両方にたくさんのメリットをもたらしてくれるからおすすめだよぉ。
たしかに、僕も今回オムニチャネルのお店で買い物できたおかげで買い物できたし、本当に助かりました!ほかには、どんなメリットがあるんですか?
販売戦略にオムニチャネルを取り入れるメリット

オムニチャネルを取り入れた販売戦略には、以下の3つのメリットがあります。
CXを大きく向上させられる
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、サービスを利用したお客さまの体験や経験する価値のことです。CXを高めることができれば、お客さまの購買体験に対する満足度を向上させられて、リピーターや口コミの獲得、競合との差別化を図れます。
お客さまは自分の好きなタイミングで好きな方法で買い物ができ、チャネルの垣根が買い物の障害になることはありません。
ストレスなく買い物ができるため、CXが向上して企業や店舗、商品そのものへの満足度が高まる可能性があるでしょう。
機会損失を防げる
オムニチャネルを取り入れることで、機会損失を防ぐことが可能です。従来は、「店舗にないなら、ほかの会社の似た商品でいいか」「通販が売り切れなら別に買わなくてもいいか」と、チャネルが分断されていたことで顧客の獲得機会を逃すことも多々ありました。
そこで「店舗は売り切れですけど、このままECサイトから自宅まで配送手配できますよ!」「ECサイトにはありませんが、お近くの店舗で購入できますよ!」と案内できれば、チャネルを超えた購買につなげられる可能性が高まります。
顧客分析を次の施策に活かせる
オムニチャネルで各チャネルごとのお客さまの行動を正しく計測できれば、次の施策に活かせます。すべてのチャネルの行動をCRMやMAツールに記録して分析できれば、お客さまのニーズや嗜好を的確に把握できるでしょう。
その結果、より正確なCRMの実施が実現し、一人ひとりに合ったアプローチをする「One to Oneマーケティング」を行いやすくなるのです。
最適なアプローチによる機会損失の防止はもちろんのこと、カスタマーエンゲージメントの向上による満足度・LTVの大幅なアップも可能となります。
わ~、ホントですね!オムニチャネルって、こんなにメリットがたくさんあるんですね!
そうだね。ECサイトや小売店を持っていて売上に悩んでいるのなら、オムニチャネルを検討してみると売上増加を目指せる可能性が高いから、ビギニャー君が担当している企業にも提案してみてね。
オムニチャネルって、ほかにはどのようにビジネスで活用できるんですか?
オムニチャネルを使用した他社の成功事例をご紹介

最後に、オムニチャネルを使用した実際の成功事例についてご紹介します。これからオムニチャネルの導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてみてください。
ECサイトで購入した商品を近くの店舗で受け取れる
セブン&アイホールディングスが運営するECサイト「オムニ7」では、ECサイトである「e.デパート」で購入した商品を任意のセブン-イレブンで受け取れるサービスを実施。サービス利用時はポイントが付与され、すべての関連サービスで利用できます。
どの商品の在庫がどこにあるのかを正確に把握できるIoTを活用した管理体制、今まで培ってきた配送ネットワークと豊かな人材を最大限活かした、オムニチャネルの代表的な事例です。
小売店なのに手ぶらショッピングを実現
ベビー用品を取り扱うアカチャンホンポでは、大型の遊具やベビーカーなどを取り扱っているため、従来より「荷物の持ち帰りが大変だ」というお客様の声がありました。
そこでオムニチャネルを取り入れ、店頭にタブレットを設置。お客さまは店頭でじっくりと商品を確認したうえでタブレットから商品を購入し、そのまま自宅へ荷物を配送してもらうことが可能となりました。お客さまのニーズを汲み取った、CXを大幅に向上させるオムニチャネルの成功事例です。
オムニチャネルの導入でアパレル関連のCX、売上増加に成功
アパレルブランドのユニクロでは、ECサイトで購入した商品の店頭受取を実施。実に3分の1程度のお客さまが店頭受取を選んでいて、ECサイトのデメリットである「商品を好きなときに受け取れない」という課題を解消しています。
また、店頭に足を運ぶお客さまが増えたことで、「ついでにお店も見ていこうかな」という心理が引き起こすクロスセル(関連商品やほかの商品を一緒に買うこと)が増加。ECサイトだけではなく店頭の売上も向上し、売上増加に貢献しています。
チャットボットを活用してDX化を実現
近年は、オムニチャネルに対応したチャットボットも登場しています。店頭システムやECサイト、SNS、電話などといったさまざまなチャネルに接続できるチャットボットを導入することで、電話での注文や在庫確認、お問い合わせなどを自動化できます。
たとえば、お客さまが注文をチャットボットに送信した際、チャットボットが顧客情報をデータベースで照会し、商品在庫を確認したうえで「〇日に△△店でお受け取りが可能です」と返答を返すことが可能です。また、お支払い方法を案内したり決済URLを送ったりすることもできます。
お客さまは場所や時間に関係なく買い物できるようになりますし、企業はお客さまへの対応を自動化できます。業務のプロセスそのものを変革し、他社への競争優位性を高めることができる「オムニチャネル対応のチャットボット」は、DX化が進む社会に適応したツールだと言えるでしょう。
MAツールでマーケテイングを自動化
マーケテイングや営業活動を自動化できるMAツールも、オムニチャネルに活用できます。複数のチャネルにおけるお客さまの行動履歴をMAツールで管理すれば、お客さまの購買意欲や営業確度を評価して、優先順位を決める業務を自動化できます。
その結果、商品を買ってくれる確率が高いお客さまに絞って効率的にアプローチができるようになるのです。またMAでは、お客さまを属性ごとにリスト化したり、リストごとに最適なアプローチを行ったりする業務も自動化できます。
「このお客さまには店頭のキャンペーンを案内しよう」「このお客さまにはECサイトの家電クーポンを配布しよう」など、一人ひとりに合ったアプローチを自動で行えるため、売上の増加やマーケテイングのDX化に効果を発揮してくれます。”
へぇー、たくさんの企業やツールがオムニチャネルを活用して売上増加を成功させているんですね!勉強になります!
でも、オムニチャネルの導入ってとっても難しそう……。
もちろん簡単ではないけど、ちゃんとポイントを押さえればきちんと導入を成功させることはできるよ。最後に、オムニチャネル戦略を成功させるためのステップを紹介するね。
オムニチャネル戦略を成功させるためのステップ

オムニチャネルを導入するときは、システムの導入や運用など多くの手間とコストがかかります。やみくもに実施しようとしても成功させられないケースが多々あります。
オムニチャネル戦略を成功させるためには、正しい手順を踏んで計画的に施策を進めていくことが大切!それぞれのステップをやさしくご紹介します。
現状を把握し、計画を立てる
まずは、現状を把握して問題点を改善するための計画を立てましょう。実店舗しかない企業は「ECサイトを立ち上げる」、顧客情報を管理する環境が整っていない場合は「新しいシステムを導入する」など、企業の課題によって取るべき行動は異なります。自社に合った計画を立てるためにも、現状を正しく知ることからはじめましょう。
場合によっては、新しく部署を立ち上げたり社内の体制を変えたりする必要があるかもしれません。
オムニチャネルの導入には手間もコストもかかるので、客観的な数字や根拠をもとに現実的な計画を立てることが大切です。
顧客の感情や接点を整理する
オムニチャネルの最大の目的は、CXを向上することです。お客さまのことを知らなければこの目的は達成できないので、施策を実施する前にお客さまの感情や行動を正しく把握しておく必要があります。
顧客の感情や接点を整理するためには、お客さまが商品に出会ってから購入に至るまでの行動や感情を可視化した「カスタマージャーニーマップ」の活用がおすすめです。
顧客行動の仮説を立てることができるので、「どのようなチャネルが必要か」「どのようなポイントがネックになるのか」「どのような購買体験を提供すれば喜んでもらえるか」などを推測できるようになります。
部署を横断するため、全社・全チャネルで認識を統一する
オムニチャネルではすべてのチャネルを連携させる必要があるため、全社・全チャネルで認識を統一する必要があります。
「自分が担当するチャネルに在庫がないときはどう対応するのか」など、すべての関係者が同じ認識・対応方法を知っていないとスムーズな連携はできません。
一部の部署やチャネルだけが取り組むのではなく、部署やチャネルを横断して全員が共通認識を持てるように準備を進めましょう。
各タッチポイントのデータやシステムを統合する
お客さまの感情や自社の課題、統合したいチャネルを洗い出せたら、いよいよ各タッチポイントのデータやシステムを連携させる段階に入ります。
この際、既存のシステムをカスタマイズして連携させたり、システム自体を変更したりしなくてはいけないため、非常に手間やコストがかかることを理解しておきましょう。
既存のMAツールやCRMを連携させるほか、オムニチャネル化支援ツールを導入することでもデータやシステムの統合は可能です。
はじめての企業が自社で対応することは難しいので、専門のノウハウを持った企業に相談するとスムーズでしょう。
効果の検証と改善
オムニチャネルの運用をスタートしても、なかなか浸透させられなかったり効果を実感できなかったりする企業は多いものです。そのため、一定期間ごとに効果の検証を行い、必要に応じて運用方法を改善していくことが大切です。
お客さまのニーズは日々変化しますし、実際に運用しないと見えてこない問題もあるでしょう。常にPDCAサイクルを回してよりよい戦略に磨き上げることが、オムニチャネルを成功させるためのポイントです。

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わたしたち株式会社ゴンドラでは、
お客さまの課題に合わせたオムニチャネル戦略の実施を支援しています。
課題の分析からシステムの導入、その先の運用までサポートできますので、
「オムニチャネルを導入したいけどどうしたらいいかわからない・・・」
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上記のようなオムニチャネルに関するお悩みをお持ち方は、ぜひお気軽にご相談ください!